前置き
ABC246 G 「Game on Tree 3」 を自力で解いたら、解説よりもシンプル(?)な解法になったので紹介します。
公式及びユーザー解説はこちら。
解法
公式解説には木DPとか二分探索などと書かれていますが、面倒なので貪欲に考えます。
今回は、青木くんが得点の高い頂点から順にいくつまで にできるかを考えられれば良さそうです。
入力例1を使って考えます。
まず、高橋くんが頂点 にそのまま辿り着くと最大値の 点を取られてしまうので、これを にすることが最優先事項です。 後のことを考え、頂点 を にするタイミングをなるべく遅らせてみます。 すなわち、頂点 の親である頂点 から開始するターンに にします。 逆に、これより前のターンに頂点 を にしても先出し不利で全く意味がないので、これが最善です。
次に にすべきは 点である頂点 か のいずれかですが、この順番は関係ないのでとりあえず頂点 から考えます。 先程と同様に頂点 開始時に にしたいところですが、このタイミングは既に頂点 に使うことが決まっているので、次点で更に親の頂点 開始時を使うことにします。 このように にしたい頂点の祖先を近い方から順に見ていって、まだ使われていないタイミングがあればそこを使うようにします。
同様に、頂点 を にするタイミングは頂点 開始時が予約済みなので頂点 開始時となります。
次は 点である頂点 を にしたいところですが、祖先である頂点 と のいずれも予約済みなので、ここを にするのは不可能です。
したがって、今回の高橋くんは 点を得ることができます。
計算量
さて、方針は決まったもののそのまま実装すると計算量がマズそうです。 例えば、木の頂点 から までが単純パスであり残りが頂点 の子であるとします。 そして各頂点の得点がその頂点番号であるとすると、頂点 の子を順に にしていくことになりますが、ターンごとに遡る祖先の数が ずつ増えていくので、計算量が くらいになってしまいます。
そこで、path compression という手法を用います。 やることは単純で、一度の探索で通った各頂点の次の探索候補(本来は親)を最後に通った頂点のものに統一して書き換えるというものです。 素集合データ構造(Union-Find)で見た人も多いと思います。 実際、今回やっていることは行き先が同じ頂点の素集合(部分木の頂点集合)をその根を代表にして管理することだと言えます。
ちなみに、Nachiaさんのユーザー解説に出てくる Weighted Union Heuristic (所謂マージテク)も Union-Find に用いられている unoin by rank という手法と同様です。
Union-Find は path compression と unoin by rank を組み合わせることでメチャクチャ速くなっているらしいですが、どちらか片方だけでもN回探索の計算量が になるらしいです。
実はまだNachiaさんの解法を理解できていないのですが、なんとなく path compression の方が楽なのではないかという気がしています。
あとは にする頂点の順番を決めるのに適当なソートで 掛かるくらいなので、全体で です。
実装
のペアを優先度付きキューで並べ替えておき、DFSかBFSで各頂点の親を見つけておきます。
そして親とは別に次の探索候補を管理する配列を用意し、 などの空きを表す値で初期化しておきます。 なお、この配列の長さを として、(実際には存在しない)根の親を表す値を としておくと実装が楽になります。
あとはキューから順に取り出していき可能な限り探索をすれば良いです。 好みですがキューに番兵として を置いています。
#include <bits/stdc++.h> using namespace std; int main() { int N; cin >> N; priority_queue<pair<int, int>> q; q.emplace(0, 0); for (int i = 1; i < N; i++) { int A; cin >> A; q.emplace(A, i); } vector<vector<int>> g(N); for (int i = 1; i < N; i++) { int u, v; cin >> u >> v; u--, v--; g[u].emplace_back(v); g[v].emplace_back(u); } vector<int> parents(N); function<void(int, int)> dfs = [&](int x, int p) { parents[x] = p; for (int nx : g[x]) { if (nx != p) { dfs(nx, x); } } }; // N: no parent dfs(0, N); // -1: non-zero, else: next candidate for non-zero vector<int> skip(N + 1, -1); // find the nearest non-zero ancestor function<int(int)> find_non_zero = [&](int x) { // path compression like DSU return skip[x] == -1 ? x : skip[x] = find_non_zero(skip[x]); }; while (true) { auto [a, x] = q.top(); q.pop(); int non_zero = find_non_zero(parents[x]); if (non_zero == N) { cout << a << endl; break; } // replace with zero and set candidate skip[non_zero] = parents[non_zero]; } }
終わりに
実は最初 path compression の計算量を知らずにACしてしまったのですが、後で調べて嘘解法ではなさそうだということが分かったので良かったです。